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AIが出す数値は台帳で守る

AIが生成した文章の数値は、要約を経るたびに意味が変わっていく。当社で見積りの数字が別の事実として伝播しかけた経験から、数値は台帳で承認制にして守るという運用の考え方を書きました。

AI が文章の中で出してくる数字は、そのまま信じてはいけません。数字は、人の手や AI を経るたびに、意味がすり替わっていくからです。

うちは社長 1 名と、AI(COO 役の Claude Code)だけの一人会社です。 報告も下書きも、多くを AI が書きます。

そのなかで、一度ひやりとしました。 ある場面で出した見積りの数字が、いつのまにか別の文脈の「事実」として、あやうく広まりかけたのです。

そこから足した運用を、実際にやっている側として書きます。

📉数字は、要約を経るたびに化ける

あるとき出した「見積り」の数字が、要約と転記を重ねるうちに、いつのまにか「確定した事実」の顔をしていました。

きっかけは、ちょっとした数字でした。 ある作業について「これくらいかかりそう」という見積りとして口にした数字が、報告としてまとめられ、さらに別の文書へ引き写されていく。

その過程で、頭についていた「見積り」「おそらく」という但し書きが、少しずつ落ちていきました。 要約は、細部を削ってこそ要約です。だから条件つきの数字ほど、条件のほうが先に消える

気づいたときには、その数字は別の文脈で確定した事実のような顔をしていました。中身は同じ数字なのに、意味がすり替わっている。 幸い、公開物に載る前に止められましたが――ぞっとしました。

AI が悪いわけではありません。要約を重ねれば、人がやっても起きること。 ただ、AI は要約と転記をものすごい速さで回すぶん、 このすり替えも速く、静かに進むのです。

📒だから、数値は「台帳」を通す

公開物に載る数字は、思いつきで書かせない。いちど数値の台帳に登録し、承認を通ったものだけを使う形にしました。

そこで足したのが、数値の台帳(ledger)という考え方です。 成果物に載せる数字は、その場の勢いで書かない。 いったん台帳に登録し、承認を通ったものだけを本文で使う。そういう順番にしました。

台帳に載せるときは、数字だけでなくそれが何の数字か(見積りか実測か、いつ・何を測ったか)をひとまとめにします。 数字と但し書きを、切り離せない形で持たせる。 こうすると、要約で条件だけが先に落ちる事故が起きにくくなります。

大事なのは、この仕組みを「載っていなければ通さない」という止め方にしていることです。 台帳にない数字を本文に書こうとしたら、そこで止まる。 うっかりでは通り抜けられない。人の善意や注意力に頼らず、仕組みで止める側に倒しています。

🔗出所のない数字は、載せない

数字には、必ず出所を紐づける。自分たちが測ったのか、外部の資料から来たのか。出所を言えない数字は、そもそも書かない。

台帳と合わせて決めたのが、出所のない数字は載せないという原則です。 自分たちが実際に測った数字なのか、外部の資料から引いた数字なのか。 それを言えないものは、公開物に書かない。

外部から引くなら、どこの誰が出した数字かを必ず添える。これは私たちが実体験していないテーマを扱うときに、特に効きます。 「一般にこう言われている」で片づけず、出典に帰属させる。 数字の信頼性は、大きさではなく出所で決まるからです。

✍️「複数」で足りる場面では、数字を書かない

精密な数字を出すことが、いつも正しいとは限りません。定性表現で足りるなら、あえて数字を書かない勇気も要ります。

意外かもしれませんが、台帳を運用しはじめて増えたのは、数字を書かない判断でした。

「数件」「複数」「しばらく」で意味が通るなら、無理に精密な数字を出さない。 精密な数字は、それが正確であることを担保しなければならない。 担保できないなら、定性表現のほうが誠実です。

じっさい、この記事でも私は具体的な数字をほとんど出していません。 出せる裏づけのない数字を並べるより、そのほうが正直だからです。 数字を書かない、という選択肢を持っておくだけで、 あやしい数字が本文にまぎれこむ余地が、ぐっと減ります。

誤解してほしくないのは、これは数字を軽んじる話ではないということです。むしろ逆で、責任を持てる数字だけを、責任を持てる形で出すための線引きです。裏づけのある一つの実測値は、あやふやな数字十個より、ずっと重い。 台帳を通すのは、その一つを守るための手間です。

🧭AIに文章を書かせている人へ

数字の事故は、書いた瞬間ではなく、要約と転記のあいだで起きます。だから守るべきは「書くとき」より「運ぶとき」です。

AI に報告や記事を書かせているなら、数字については次の順で守ることをおすすめします。

  • 公開物に載せる数字は、数字と但し書き(見積りか実測か・いつ何を測ったか)をセットで台帳に登録する。
  • 台帳にない数字は本文に通さない、という止め方にする(注意力に頼らない)。
  • 外部由来の数字には、必ず出所を添える。
  • 「複数」「数件」で足りる場面では、あえて精密な数字を書かない。

一言でいえば――数字は、書いた瞬間より、運ばれる途中で化ける。だから、運ぶ経路のほうに関所を置く。 私たちがひやりとして学んだのは、そこでした。

あなたの成果物にも、出所のあやしい数字が紛れていませんか。 もし気になるなら――その数字を、いちど台帳に載せてみてください。

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