i-Willink
|実務|✍️ i-Willink

何を自動化して、何を人が持つか — 小さな会社の優先順位づけ

自動化はやみくもに増やすと、通知とメンテでかえって重くなる。頻度・可逆性・判断コストの三軸で、どれをルーチンに回し、どれを人の判断に残すか。社長ひとり+AIの会社が実際に仕分けた基準と失敗を共有します。

「何を自動化して、何を人が持つか」――答えはシンプルです。取り返しのつくことは機械に、取り返しのつかないことは人が握る。頻度が高くて、やり直しが効いて、判断の要らないものだけを自動に渡す。それ以外は、面倒でも手元に残す。

自動化は「増やせば楽になる」ものではありません。

むしろ増やしすぎると、通知とメンテナンスで前より重くなる。これは当社が実際に、通知の山に埋もれてから学んだことです。

当社は社長ひとりと AI(COO 役)だけの会社です。人手が足りないぶん、日々の運営はかなりの部分を自動のルーチンに任せています。

ただ、全部を自動にしているわけではありません。「これは人が持つ」と意図して手元に残した業務が、いくつもあります。

この記事では、当社が自社の運営で実際に仕分けた基準と、その過程でやらかした失敗を共有します。

🌀増やしすぎて逆に重くなった話

通知を増やしすぎると誰も読まなくなり、本当の異常が埋もれる。自動化には受信とメンテの隠れコストがついてくる。

最初にやった失敗は、通知の量産でした。

「健康監視のために毎日チェックを回そう」。そう決めて、リポジトリの状態やデプロイの死活を細かく通知させたのです。

ところが、しばらくすると誰も読まなくなった。実際には、社長が読まなくなりました。毎日「異常なし」が並ぶと、たまに混じる本当の前兆が、その中に埋もれてしまう。

――自動化には、見えないコストが二つあります。ひとつは通知の受信コスト。もうひとつはメンテナンスのコストです。

仕様が変わればスクリプトも直す必要があるし、放置すれば「動いているつもりで、実は空振りしている」状態になる。当社でも、実測スクリプトが空の結果を返したのを「0 件」と誤読しかけたことがありました。

自動化は、増やした瞬間に、その分だけ保守対象が増える。頭では分かっていたつもりが、身にしみました。

🧭頻度 × 可逆性 × 判断コストで仕分ける

自動化するかは頻度・可逆性・判断コストの三軸で決める。取り返しのつくことだけを機械に渡すのが軸だ。

では、どう線を引くか。

失敗を経て、当社は自動化する/しないを三つの軸で見るようにしました。頻度・可逆性・判断コストです。

頻度が高くて、やり直しが効いて(可逆)、判断の余地がほとんどない。そういうタスクは、迷わず自動化します。

逆に、頻度が低くて、一度やると戻せなくて(不可逆)、その都度の状況判断が要る。これは人が持ちます。

この三軸は、当社が承認レベルを決めるときに使っている「可逆性 × 外部到達 × 金銭・法的」という考え方とも地続きです。取り返しのつくことは機械に任せ、取り返しのつかないことは人が握る。

単純ですが――これが一番効きました。

🤖自動化に回したもの — 定型の走査

毎日・可逆・機械的な定型作業は自動化に寄せる。ただし決定論的チェックを必ずセットで持たせる。

実際にルーチン化したのは、たとえば毎朝の進捗まとめ(standup sweep)です。前日の作業ログを走査して、今日見るべき項目を並べる。

これは頻度が高く(毎日)、間違えても翌日に上書きできて(可逆)、判断はほぼ機械的です。三軸のどれもが「自動化向き」を指しています。

ほかにも、マージ済みブランチの掃除や、決まった形のログ収集。「やることが決まっていて、結果が定型で、失敗しても戻せる」ものは、自動に寄せました。

ここでひとつ、大事なコツがあります。自動化したものにも 決定論的なチェック を持たせることです。「たぶん回った」ではなく、機械的に成否を確認できる仕掛けを、一緒に用意する。

自己申告で「できたはず」と判断させると――当社では実際に、カバレッジを大きく取り違えた経験があります。だからこそ、機械のチェックで裏を取る。

人が持ち続けたもの — 不可逆な判断

価格・契約・外部発信など不可逆で判断コストの高いものは、面倒でも人が最後のスイッチを握る。

一方で、意図して手元に残した業務があります。価格や契約に関わる意思決定。外部に一度出したら引っ込められない発信。事業の方向づけ。

これらは頻度が低く、不可逆で、判断コストが高い。三軸がそろって「人が持つべき」を指します。

公開する文章の最終確認も、人の側に残しました。文体や事実関係のニュアンスは、機械が整えたあとに、人が一度目を通す。下書きを作るところまでは任せても、外に出す最後のスイッチは、押さない。

線引きのコツは、「間違えたときに、どれだけの手間で戻せるか」を想像することです。戻すのが一手なら、自動。戻せないなら、人。

ここを曖昧にすると、あとで一番高くつきます。

🔧自動化にも保守の予算を割く

自動化は作って終わりではない。月に一度は棚卸しして、腐ったルーチンは止め、過剰な通知は絞る。

もうひとつ学んだのは、自動化は作って終わりではない、ということです。

ソフトウェア開発でも、いちど書いた自動テストや仕組みは、継続的に手入れをしないと腐る――という考え方が知られています(Martin Fowler の Continuous Integrationなどで語られる発想です)。

当社の小さなルーチンも同じでした。だから月に一度は、「まだ役に立っているか、通知が過剰になっていないか」を棚卸しするようにしています。

役目を終えたルーチンは、止める。通知が多すぎるものは、頻度を落とすか、異常時だけ鳴らすように変える。自動化の本数は、増やすことより「必要な数に保つこと」が大事だと、今は思っています。

📝まとめ — 取り返しのつくことは機械に

取り返しのつくことは機械に、つかないことは人に。減らす判断もまた立派な自動化戦略だ。

小さな会社の自動化は、数を競うものではありません。頻度が高くて、やり直しが効いて、判断が要らないもの。それだけを機械に渡す。

逆に、不可逆で判断コストの高いものは、面倒でも人が握る。そして自動化したものには、決定論的なチェックと保守の予算をセットで用意する。

当社が通知の山に埋もれてから得たのは、この地味な線引きでした。自動化を減らす判断もまた、立派な自動化戦略だと考えています。

――あなたの会社にも、「これは人が握るべき」という業務があるはずです。まずはそこから、線を引いてみてください。

開発パートナーを探していますか?

AIでプロダクトを最速で形にしませんか?

最短1週間でMVPを開発。アイデアの検証から本番リリースまで、i-Willinkがフルサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

無料で相談する

最新記事をメールで受け取る