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意思決定はADRで残す — 17本書いて分かったこと

一人会社の意思決定をADR(Architecture Decision Record)に残し続けた実践記録。なぜ決めたかを書くと、半年後の自分が過去の判断を検証・上書きできる。

意思決定は「決めた瞬間」がゴールじゃない。なぜ決めたかを1枚に残す――それだけで、半年後の自分が過去の判断を検証し、必要なら上書きできるようになりました。

うちは社長1名とAI COO(Claude Code)だけの一人会社です。人が少ないほど、判断は速く流れて、記憶からこぼれ落ちる。

だから重要な決定はADR(Architecture Decision Record)で残してきました。番号は017番まで積み上がっています。

きれいな成功譚ではありません。欠番もあるし、外れた予想もある。それでも消さずに残す――この記事は、その実践から分かったことの記録です。

📝ADRとは「なぜ決めたか」を残す1枚

ADRは1つの決定を「背景・選択肢・決定・理由・影響」で1枚に残す軽いフォーマット。設計だけでなく事業判断にも使えます。

ADRはもともとソフトウェア設計の世界で広まった軽量な書式です。1つの決定につき、背景・選択肢・決定・理由・影響を1枚に書く。ただそれだけ。

仰々しい設計書じゃありません。後から読んで「あのとき何を考えていたか」を復元できれば、それでいい。書式に迷ったら、実践者コミュニティがまとめた ADRのテンプレート集 を見れば十分です。

うちはこれを設計以外にも広げました。SaaS外販を止めてOSS化へ舵を切った判断。ARR目標を現実的な水準へ引き直した判断。自走ループの停止条件を状態ベースへ変えた判断。

どれも「そのとき何を捨てて、何を選んだか」を1本のADRに残しています。

🔁「なぜ」を書くと、半年後に検証できる

結論だけ残すと判断は動かせない前提になる。理由まで書けば、半年後に前提を点検して上書きできます。

結論だけ残すと、どうなるか。半年後に読み返しても「なぜこう決めたんだっけ」が思い出せません。

すると過去の判断は、動かせない前提になる。環境が変わっても、ずるずる引きずってしまう。

ADRの効きどころは、決定そのものより理由の部分にあります。理由さえ書いてあれば、「当時の前提はまだ生きているか」を1つずつ点検できる。

崩れていたら、新しいADRで上書きすればいい。――判断は、消せないブロックではなく、版管理された可変の資産になります。実際、若い番号のADRの前提が古くなり、後続のADRで置き換えたことは何度もありました。

⚖️ADR-015 — 承認基準を「重要そう」から書き換えた日

「迷ったら承認」で社長が詰まった反省から、可逆性×外部到達×金銭・法的の3軸へ判定基準を上書きした話。

一番効果を実感したのがADR-015です。

それまでの承認ルールは、業務カテゴリの一覧と「迷ったらCEO事前承認」。安全側に倒しているつもりでした。

ところが自動化を増やすほど、可逆で・内部完結で・無害な操作までCEOの承認待ちに詰まる。社長の宿題だけが積み上がっていく。安全のつもりが「負の自動化」になっていたんです。

そこでADR-015で、判定軸そのものを張り替えました。「重要そう・技術的に重い・怖い」で決めるのをやめる。かわりに可逆性 × 外部到達 × 金銭・法的拘束の3軸で決める、と。

可逆かどうかは自己申告じゃなく、実測で証明する。このルールもここで足しました。

過去のADRを読み返し、当時の前提(社長の帯域が唯一の制約だ)を検証したうえで、承認体制そのものを上書きした――「重要そうだから承認」という直感を、記録に基づいて棄却できたのが大きかった。

🧩失敗も残す — 番号は飛ぶし、前提は古びる

欠番も外れた予想も消さない。なぜ古びたかが次の学びになるから。常駐文書に状態を直書きしない教訓も残しました。

きれいに17本並んでいるわけじゃありません。統合や再編で欠番になった番号もあるし、書いた当初の想定が外れたADRもあります。

それでも消さない。「なぜその判断が古びたか」自体が、次の学びになるからです。

運用の中で一番刺さった教訓は、これでした。――状態を持つ値を、ADRのような常駐文書に直書きしないこと。

バージョンや期日や残数をADRに埋めると、すぐ現実とずれる。そして、読んだAIが古い文書を信じて、誤った状態報告をしてしまう。

文書は「計画」、生きた状態は別で実測する。この切り分けを、失敗を通じてルールにしました。

🛠一人会社での運用の実際

AI COOが起草しPRで出す→社長がレビューして採択→マージ。大げさな仕組みは要らず「決めたら1枚」を続けるだけ。

運用はシンプルです。AI COOがADRを起草して、PRで出す。社長がレビューして採択か却下を決め、マージする。

採択されたADRには、ステータスと実際のマージ状況を書く。以後の判断は、これを根拠にします。専用のワークフローコマンドを1つ用意しておけば、毎回おなじ骨格で書ける。

大げさなプロセスは要りません。効くのは「決めたら1枚残す」を続けることだけ。

全部の判断を残すわけでもありません。目安はひとつ。「半年後に『なぜこうした』を聞かれて、答えに詰まりそうか」。詰まりそうな決定だけ、1枚にする。それで十分でした。

一人でも、AIと二人でも――過去の自分は、最良の批判者になります。記録があれば、その批判者と後から議論できる。

🌱まとめ — 記録は未来の自分への引き継ぎ

意思決定の価値は決めた瞬間より「後から検証・上書きできること」。記録は未来の自分への引き継ぎです。

ADRを書き続けて分かったことは、1つです。

意思決定の価値は「決めた瞬間」じゃない。「後から検証して、上書きできること」にある。

なぜ決めたかを残せば、判断は固定された過去ではなく、更新できる資産になります。一人会社ほど、その引き継ぎ先は未来の自分自身です。

まずは次の1つの決定から。結論と理由をセットにして、1枚だけ残してみてください。

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