睡眠と生産性——副業を続けるための眠り方
睡眠を削って副業時間を捻出すると、かえって続かない。睡眠負債・概日リズム・就寝前の光という睡眠科学の知見を、副業を無理なく続ける眠り方として実践に落とします。出典つきの一般情報としてまとめました。
副業を長く続けたいなら、いちばん削ってはいけないのは睡眠です。
本業のあとに時間をひねり出そうとすると、まず手が伸びるのが睡眠時間。私も合同会社を一人で、しかも副業として回しているので、その誘惑はよく分かります。
しかも私は、フィットネスアプリ「fit-ai」を作っている側でもあります。運動や疲労、回復をデータとしてどう扱うか――それを作り手として設計している。睡眠とパフォーマンスの話は、プロダクトの中でも自分の働き方でも、毎日ぶつかっているテーマです。
でも、夜を削った翌日はコードを書いても判断が鈍る。やり直しが増える。――増えたはずの1時間が、翌日に利息つきで返ってくる感覚です。
やってみて意外だったのは、先に鈍るのは手の速さではなく「判断」のほうだった、という点です。眠い頭でもコードは書けてしまう。ところが、そもそも要らない機能を作り込む、優先順位を取り違える――といった、あとで高くつくミスが増える。タイプミスより、こっちのほうがずっと痛い。だから私は、睡眠を「作業時間の話」ではなく「判断の質の話」として扱うようになりました。
この記事では、睡眠負債・概日リズム・就寝前の光という三つの知見を、医療的な断定はせず一般情報として整理します。副業を無理なく続けるための、眠り方の話です。
🛌睡眠負債は気合いでは取り戻せない
要点:足りない睡眠は借金のように積み上がり、気合いではなく睡眠でしか返せない、という考え方です。
「睡眠負債(sleep debt)」という言葉があります。スタンフォード大学の睡眠研究者ウィリアム・デメント氏らが広めた概念で、慢性的に足りない睡眠が借金のように積み上がっていく、という見方です。
やっかいなのは、これが気合いでは返せないこと。週末の寝だめである程度は埋め合わせられても、平日に毎晩削った分がそっくり消えるほど単純ではない、と指摘されています。
では、どれくらい眠ればいいのか。ここは個人差が大きいところです。米国の National Sleep Foundation は、成人の目安として7〜9時間を挙げています(Hirshkowitz et al., 2015)。日本では厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」が、成人は6時間以上の確保を目安にしています。
数字は鵜呑みにしなくていい。自分が何時間眠れば日中ぼんやりしないか――そこを観察するほうが、ずっと実用的です。
私自身は、副業の作業を「眠い頭でやる安い1時間」より「冴えた頭でやる短い30分」に寄せるようにしました。負債を増やしてまで稼いだ時間は、結局いちばん高くついたからです。
🕰️自分の概日リズムに副業時間を合わせる
要点:体内時計はおよそ24時間周期で動いていて、集中しやすい時間帯は人によってかなり違います。
人の体には「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる、約24時間周期の体内時計があります。この仕組みを分子レベルで解き明かした研究には、2017年のノーベル生理学・医学賞が贈られました。睡眠や覚醒、集中しやすい時間帯も、このリズムに影響されることが知られています。
大事なのは、このリズムに朝型・夜型のような個人差があること。つまり、万人に効く「黄金の時間割」は無い――というのが私の実感です。
私は朝型寄りなので、難しい設計や文章は始業前の早朝に。夜は返信や軽い整理みたいな、頭を使わない作業に回しています。眠気と戦って深夜に重い仕事をするより、リズムの良い時間に寄せたほうが、同じ睡眠時間でもちゃんと進む。
就寝時刻がばらついても、起きる時刻だけは動かさない。朝に光を浴びる。これでリズムの土台が崩れにくくなる、と感じています。あなたはどの時間帯がいちばん冴えていますか。まずはそこを一週間、観察してみてください。
💡就寝前の光が、翌日の自分を削る
要点:夜に強い光を浴びると眠りを促すメラトニンが出にくくなり、寝つきが遅れやすくなります。
副業の作業は、どうしても夜、画面の前になりがちです。ここで効いてくるのが光。夜に強い光、とくに短波長の光(いわゆるブルーライト)を浴びると、眠りを促すホルモンのメラトニンが出にくくなることが報告されています。ハーバード大学の健康情報でも、夜の光が体内時計を後ろへずらしうる点が解説されています。
発光する電子書籍端末を寝る前に使うと、紙の本に比べて寝つきや翌朝の目覚めに影響した、という研究もあります(Chang et al., 2015, PNAS)。
ただ、これは「夜に画面を見たら眠れなくなる」という話ではありません。就寝前の光の環境を、ちょっと整える価値がある――その程度の一般的な傾向として受け取るのが、ちょうどいいと思います。
私の対策はシンプルです。寝る前のキリのいいところで手を止めて、部屋の照明を落とす。続きが気になるタスクは、翌朝の冴えた時間に回す前提で、メモだけ残す。
夜に粘って下げた睡眠の質は、そのぶん翌日の生産性として返ってきます。続けてみて、そう実感しています。
🧩私が副業を続けるためにやっている3つ
要点:起床時刻の固定・重い仕事の前倒し・就寝前の光の管理。この三つで睡眠を土台に据えています。
起床時刻を固定する
重い仕事を前倒しする
就寝前の光を落とす
この三つは、fit-ai を作りながら学んだことと地続きです。プロダクトでも「頑張らせる」より「続く足場を作る」ほうに寄せている。自分の睡眠でも同じでした。意志で夜更かしを我慢するのではなく、起きる時刻という土台のほうを動かさない。健康の知見を、そのまま一人会社の回し方に組み込んでいる感覚です。
これは、うちの会社の回し方そのものでもあります。私たちは AI を COO 役に据えて会社を回していて、そこでは「本人の自己申告」ではなく「仕組みで判定する」ことを徹底しています。睡眠も同じで、夜更かししない意志ではなく、起床時刻という動かない仕組みのほうに任せる。一人会社 ×AI COO× フィットネスアプリの作り手という立場だから、この「意志より仕組み」を、経営でもプロダクトでも自分の体でも、同じ形で使っています。
どれも特別な道具はいりません。副業は短距離走じゃなく、何年も続ける長い営みです。睡眠を削って前借りするより、睡眠を土台に置いて毎日を底上げする。私には、そのほうがずっと長く続く道に見えています。
今夜、いつもより30分だけ早く画面を閉じてみませんか。その30分が、明日のあなたの仕事を、きっと少し軽くしてくれます。
※ 本記事は一般的な情報の整理であり、診断や治療を目的とした医療上の助言ではありません。睡眠の不調が続く場合は、専門家にご相談ください。
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