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正しいかより、どう壊れるか

レビューで「正しいか」を探すと、見たいものだけ見えてしまう。私たちは「どこで壊れるか」を先に探し、独立した複数の視点で反証を試みる形にしています。その検証設計を一人会社の実務から書きました。

「これで合ってるか?」と自分の成果物を見直すと、たいてい「合っている」という答えが返ってきます。当然です。見たいものを探しているんですから。

うちは社長 1 名と、AI(COO 役の Claude Code)だけの一人会社です。 作るのも、それを確かめるのも、放っておけば同じ視点。

その危うさに、何度か痛い目を見て気づきました。 自分のものを「正しいか」で見ても、穴は見つからない。

だから、確かめ方の向きを変えました。 「どう壊れるか」から検証する、という話を書きます。

🔎「正しいか」を探すと、正しい証拠しか集まらない

人は、自分の期待を裏づける情報を無意識に集めます。自分の作ったものを「正しいか」で見直すと、この癖がいちばん強く出ます。

自分が作ったものを見直すとき、 頭の中の問いは、たいてい「これで合っているか?」です。 ところが、この問いには落とし穴があります。 人は、自分の期待を裏づける材料ばかり、無意識に集めてしまう

「合っているか?」と問えば、合っている箇所が目に入る。 うまく動いた経路を一つ確認して、「ほら、動いた」で安心する。 でも、本当に見つけたいのは、 うまくいった場所ではなく、まだ壊れている場所のはずです。

私はこれで何度もやられました。 自分では入念に見直したつもりが、 見ていたのは「動く証拠」ばかり。 壊れる経路は、そもそも探しにいっていなかった。 問いの向きが、最初から間違っていたのです。

💥問いを反転させる——「どこで壊れるか」から入る

検証の一手目を「壊しにいく」に変えました。正しさを確かめるのではなく、壊れる例を一つでも見つけにいく。見つからなければ、そのとき初めて信じます。

そこで、確かめるときの一手目を変えました。 「正しいことを確かめる」のではなく、「壊れる例を、一つでも見つけにいく」。 うまくいくケースではなく、うまくいかないケースを、先に探す。

入力が空だったら。想定の逆の順番で来たら。 途中で失敗したら。 こうした「嫌な場合」を先に並べて、そこを突く。 一つでも壊れれば、直すべき場所が見つかった、ということ。 いくら探しても壊れなければ、そのとき初めて「たぶん大丈夫」と信じます。

この順番の違いは、地味ですが大きい。 「正しい」を証明するのは難しくても、 「ここが壊れる」を示すのは、例が一つあればいい。 だから検証は、反証を試みるほうが、ずっと速くて正直でした。

👥作る人と確かめる人を、役割で切り離す

同じ頭で作って確かめると、どうしても甘くなる。うちは「直せる立場」と「壊しにいくだけの立場」を分け、確かめる側には手を入れさせません。

一人会社でも、作り手と確かめ手は分けられます。 うちでは、成果物を確かめる工程を、「作る役」とは別の役割として立てています。 確かめる側は、読むだけで、直しはしません。

なぜ直させないか。 直せる立場だと、つい「まあ、後で直せるし」と甘くなるからです。 確かめる役には、粗探しに徹してもらう。 良し悪しを判断する側と、手を入れる側を分けることで、 「動いたことにして先に進む」誘惑を断ちます。

さらに、大事な判断ほど、 一つの視点で決めないようにしています。 独立した複数の見方で同じものを突いて、多くが「ここが弱い」と言うなら、いったん止める。 一人の思い込みで押し切らないための、簡単な歯止めです。

🧪「反証できないものは信じない」という古い知恵

壊そうとして壊れなかったものだけを、とりあえず信じる。この考え方には、科学哲学の長い裏づけがあります。

「正しさを証明する」より「反証を試みる」ほうを重んじる。 この発想は、科学の世界で古くから語られてきたものです。 哲学者の Karl Popper は、反証可能性(falsifiability)という考え方で、 ある主張が科学的であるためには「どうなれば間違いと分かるか」を示せる必要がある、と論じました。

私はここから、大きなヒントをもらいました。 成果物を「正しいと信じる理由」を集めるのではなく、「間違いだと分かる条件」を用意して、そこを突く。 突いても壊れなかったものだけを、とりあえず信じる。

もちろん、これで「絶対に正しい」とは言えません。 明日、新しい壊れ方が見つかるかもしれない。 でも、自分に都合のいい確認だけで安心するよりは、ずっと堅い。 検証は、賛成票を数える作業ではなく、反対材料を探す作業だと考えています。

🧭今日から、確かめ方の向きを変える

自分の成果物を見直すとき、最初の問いを一つだけ変えてみてください。「合っているか?」ではなく「どこなら壊せるか?」。それだけで、見える景色が変わります。

明日から試せる、小さなやり方を。 何かを確かめるとき、最初の問いを「これ、どこなら壊せるだろう?」に変えてみてください。 一番きわどい入力、一番ありえない順番、一番嫌な失敗。 そこを先に突く。

そして、可能なら、確かめる作業を 「直せない立場」でやってみる。 手を入れられないと、人は正直に粗を探すようになります。 自分ひとりでも、作る自分と、壊しにいく自分を、頭の中で分けるだけで効きます。

あなたは今、自分の作ったものを 「正しいか」で見ていませんか。 その問いを、「どう壊れるか」に反転させてみてください。 壊そうとして壊れなかったものは――そのぶん、信じるに足ります。

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