一人会社をAIで回す全体設計——任せる/握るの分担
本業を持つ社長1名とAI COOで合同会社を回している私たちの、実際の分担図です。判断基準は役職や作業量ではなく「引き返せるか」。任せる範囲と人が握る点を、失敗事例も含めて書きました。
AIと人の分担を決める基準は、作業の種類でも量でもなく「その操作は引き返せるか」。これが、一人会社をAIで回してきた私たちの現時点の結論です。
i-Willinkは、本業を持つ社長1名の合同会社です。そこにAIのCOO——具体的にはClaude Codeを「実務を任せる役員」として置き、アプリ開発、WordPressサイトの受託運用、この /media を含む発信までを二人三脚で回しています。
「AIに会社を任せるなんて怖くないのか」と思われるかもしれません。怖さはあります。実際、任せ方を間違えて痛い目も見ました。だからこの記事は成功自慢ではなく、失敗して直した後の、いまの分担図の共有です。
🗺️分担の原則: 「引き返せるか」で線を引く
重要そうかどうかで分けると失敗します。可逆性で分けるのが実運用の答えでした。
最初のころは「重要な仕事は人間、単純作業はAI」という感覚的な分け方をしていました。これはうまくいきません。「重要」の判定が毎回ブレるからです。
いまは社内ルールとして、操作を3段階に分けています。
①即時実行してよいもの——やり直しが利き、社外に届かず、お金と法律が絡まないもの。コードを書く、社内文書をまとめる、調査する。ここはAIが人の確認なしで進めます。
②実行後に報告するもの——社外に出るが取り消せるもの、あるいは社内で完結するが元に戻しにくいもの。定型に沿った更新作業などです。
③実行前に承認が要るもの——お金(一定額以上の支出)、法的な約束、本番データの破壊、不特定多数への発信、価格やブランドの変更。ここはAIがどれだけ準備しても、最後のボタンは人間しか押せない決まりにしています。
この線引きの狙いは、「これはAIに任せていいんだっけ」を毎回ゼロから考えないことです。迷ったら「引き返せるかを実際に確かめる」が次のルールになります。
🚨前提: AIの「できました」を信じない
一番痛かった失敗はここです。報告ではなく、機械的な確認結果だけを信じる設計にしました。
運用の中で実際にあった失敗を書きます。AIが「対応済みです」と報告してきた項目が、実際には対応されていなかったことがありました。嘘をつこうとしたわけではなく、古い文書の記述をもとに「終わっているはず」と推論してしまった——AIにはこういう間違い方があります。
以来、社内ルールは「文書は計画、実物が状態」。デプロイしたと言うならURLを実際に叩いて確認する。マージしたと言うなら実際の状態を照会する。そして重要な工程には、AIの自己申告ではなくスクリプトが機械的に合否を返す仕組み(テスト、品質ゲート、チェックの自動実行)を挟みます。
この記事自体も、公開前に決定論的な検査とAIによる編集レビューを経ています。「AIに任せる」は「確認しない」ではなく、確認を人力からルールと機械に置き換えることだと考えています。
🔁定常業務: 台帳に書き、朝会でまとめて回す
定期タスクを個別に自動化すると管理が破綻したので、台帳1枚に集約しました。
死活監視、依存パッケージの確認、進捗の棚卸し——会社には「毎日・毎週やるべき小さな仕事」が積み重なります。一時期は個別のスケジューラに1本ずつ登録していましたが、数が20本ほどまで増えたあたりで形骸化しました。何が動いていて何が止まっているか、誰も把握できなくなったのです。
いまは定期タスクを1枚の台帳にまとめ、毎朝の「朝会」でAIが台帳を読んで期限が来たものを順に実行する方式です。タスクを足すのは台帳に1行書くだけ。実行されたかどうかも台帳側に記録が残るので、止まっていれば翌朝に分かります。
合わせて、AIを起動するまでもない監視(プロセスの死活など)は、トークンを消費しない素朴なスクリプトに分けています。全部をAIにやらせるのではなく、機械で足りるものは機械に、判断が要るものだけAIにという二段構えです。
🚪人間ゲートの置き場所
社長がやることは減らしましたが、ゼロにはしていません。置き場所を決めただけです。
実際にいま、人間(社長)が握っているボタンはこのあたりです。
記事の公開(AIはドラフトと品質チェックまで・公開の判断とマージは人間)。ニュースレターの配信承認(取り消せない一斉送信なので、人の承認なしには配信されない決まりにしています。準備までがAI、送るかどうかのチェックは人だけ)。顧客とのやりとりと契約。一定額以上の支出。そして会社の方向を変える判断です。
逆に言うと、それ以外——実装、調査、監視、文書化、下書き、定期業務——は基本的にAI側に寄せています。本業のある身としては、平日の限られた時間を「人にしか押せないボタン」に集中できることが、この体制のいちばんの恩恵です。
🧭まとめ: 分担図は一度で完成しない
整理します。①任せる/握るは「引き返せるか・社外に届くか・お金と法律が絡むか」で機械的に分ける②AIの自己申告を信じず、実物の確認と機械のチェックを挟む③定期業務は台帳1枚に集約して形骸化を防ぐ④取り消せない操作のボタンは人間が持つ。
この分担図は最初からこの形だったわけではなく、失敗のたびにルールを1行ずつ足して今の形になりました。たぶんこれからも変わります。一人会社×AIの体制を考えている方には、完成図を真似るより「失敗をルールに変換する習慣」のほうをおすすめしたいです。
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