一人会社のユーザーリサーチ——時間がなくても声を拾う
一人会社は専任のリサーチ担当を置けず、ユーザーリサーチに割ける時間が極端に少ない。その制約下で、アプリのレビューや受託先の直接フィードバック、アクセス解析など「すでに流れてくる声」をどう拾うか、当社の実践から書きます。
一人会社にまとまったリサーチ時間はありません。だから当社は、声を「集めに行く」のではなく「すでに流れてくる声を拾う」ことに絞っています。
社長ひとり+AIを実務担当(COO)として会社を回していると、営業もサポートも開発も自分の仕事です。専任のリサーチ担当は置けず、腰を据えたユーザーインタビューの計画を回す余裕もありません。
そこで当社が実際にやっているのは、日々の運用の副産物として届くシグナル——自社アプリのストアレビューや問い合わせ、受託先からの直接フィードバック、アクセス解析——を拾い、意思決定に回すことです。本格的な調査計画は持っていません。その前提で、限られた時間でも顧客の声を落とさない拾い方を書きます。
🔎一人会社のリサーチは「集める」より「拾う」
専任チームがいないと、わざわざ人を集めて話を聞く調査は時間切れで回りません。当社は、アプリのレビュー、受託先とのやり取り、アクセス解析といった「日々の運用ですでに発生している声」を拾うことに絞っています。新しく場を作らず、既存の流れから拾うので、追加の時間がほとんどかかりません。
ユーザーリサーチと聞くと、対象者を募ってインタビューし、結果を分析する——という一連の段取りを想像しがちです。ですが一人会社では、その段取りを組む時間そのものが最大のボトルネックになります。
当社が優先しているのは、すでに手元に届いているのに見過ごしていた声を取りこぼさないことです。ゼロから集めるより、流れてくるものを拾うほうが、限られた時間では圧倒的に費用対効果が高いという実感があります。
📱自社アプリのレビューと問い合わせを一次情報にする
自社プロダクトを出すと、アプリストアのレビューや問い合わせという形でユーザーの声が届きます。当社はこれを、わざわざ集めに行かなくても手に入る一次情報として扱っています。数は多くありませんが、実際に使った人の言葉なので、機能の優先順位を考えるときの手がかりになります。
当社は fit-ai や ClubLink といった自社プロダクトを運営しています。こうしたアプリやサービスには、レビューや問い合わせという形で、こちらから頼まなくてもユーザーの反応が届きます。件数を誇れるほど多いわけではありませんが、実際に触った人が自分の言葉で書いたものなので、想像で機能を足すより確かな判断材料になります。
大事にしているのは、レビューや問い合わせを「対応して終わり」にせず、どんな不満・要望だったかを記録に残すことです。同じ指摘が二度三度重なったときに初めて、優先して直すべき箇所が見えてきます。
🤝受託の現場は直接フィードバックの場
当社はWordPress制作の受託もしており、クライアントとのやり取りそのものが濃いフィードバックになります。「ここが分かりにくい」「この操作を減らしたい」という声は、打ち合わせや修正依頼の形で直接届きます。改まった調査より生々しく、実際の業務での困りごとがそのまま拾えます。
受託の打ち合わせや修正のやり取りは、意識していないと「作業指示」として流れていきます。ですが少し視点を変えると、そこにはお金を払ってでも解決したい困りごとが具体的に語られています。これは、無償のアンケートではなかなか出てこない濃さです。
当社はクライアントの実名は出しませんが、いただいた指摘の傾向——たとえば「更新画面が複雑で触るのが怖い」といった声——は自社プロダクトの設計にも効いてきます。受託で拾った困りごとが、自社の作り方を見直すきっかけになることがあります。
📊アクセス解析は「言葉にならない声」を映す
レビューや問い合わせを書いてくれる人はごく一部です。当社はアクセス解析を、声を上げない大多数の行動を映す鏡として使っています。どのページで離脱するか、どこがよく読まれるかを見れば、言葉にならない不満やニーズを間接的に拾えます。時間をかけずに全体の傾向をつかむ手段です。
人は不満を感じても、わざわざレビューや問い合わせを書くとはかぎりません。むしろ黙って離れていくほうが多い。その沈黙している大多数の行動を映してくれるのがアクセス解析です。
当社は数字の細かい分析に時間をかけるのではなく、「思ったより読まれていない」「ここで人が抜けている」というズレの発見に絞って見ています。言葉として届く声と、行動として現れる声。この二つを突き合わせると、片方だけでは気づけない改善点が見えてきます。
🧭本格的なインタビュー計画は当社では回していない
正直に書くと、当社は対象者を体系的に集めるユーザーインタビューやユーザビリティテストは回していません。専任チームがいる会社では、目的に応じて手法を選び、計画的にリサーチを設計します。当社が拾っているのは、あくまで日々の運用で自然に届く範囲の声だと区別しておきます。
誤解のないように書いておくと、当社がやっているのは「すでに流れてくる声を拾う」ところまでです。一般には、態度を聞く手法と行動を観察する手法、定性と定量を目的に応じて選び、計画的にリサーチを組む——という体系的な進め方があります。専任のリサーチャーがいる組織では、そちらのほうが精度は高いはずです。
一人会社にとって現実的なのは、いきなり本格的な調査を目指すことではなく、手元に届いている声を取りこぼさない仕組みを先に作ることだと考えています。将来リソースが増えたときに、より計画的な手法へ広げていけばいい。今は身の丈に合った拾い方を続けています。
✅まとめ: 流れてくる声を落とさない仕組みを先に作る
一人会社のユーザーリサーチは、時間をかけて声を集めることではなく、すでに流れてくる声を落とさないことから始まります。当社は、自社アプリのレビューや問い合わせ、受託先の直接フィードバック、アクセス解析という三つの「既存の流れ」を拾い、意思決定に回しています。体系的なインタビュー計画は回していません——ここは正直に線を引いています。
まずは、今この瞬間に手元へ届いているのに見過ごしている声がないかを確認してみてください。集めに行く前に拾う。それだけで、限られた時間でも顧客の声はかなり拾えます。
📚参考
限られたリソースでどのリサーチ手法を選ぶかを考えるとき、UXリサーチの整理として次の解説が参考になります。20の手法を「態度的/行動的」「定性/定量」などの軸で位置づけており、当社のように「今できる範囲」を見極める観点として役立ちます。
Nielsen Norman Group: When to Use Which User-Experience Research Methods
開発パートナーを探していますか?
AIでプロダクトを最速で形にしませんか?
最短1週間でMVPを開発。アイデアの検証から本番リリースまで、i-Willinkがフルサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
無料で相談する